授乳期間について

子宮内の生命から独立した存在へ

自然は、女性を子宮の中で育っていく赤ちゃんを守り栄養を与えるだけではなく、子どもを産み落とし、その子を空気中で呼吸できる新しい独立した存在へと育て上げるようにデザインしています。

子宮からの臍帯が切られた時、赤ちゃんの血液循環の中では重大な変化が起こります。心臓内で開いていた多くの通路が閉まり、別の通路が開通します。空気呼吸に順応するために肺-血液循環が確立され、汚れたガスは母親の血液の浄化システムによってではなく肺から排出されるようになります。母親の胎盤あるいは臍帯を通じて母親の血液から赤ちゃんの血液へと栄養が送りこまれる代わりに、赤ちゃんは口から栄養を摂取します。腸管では新しい循環ができ、口から摂取した栄養を身体の様々な部位へと運びます。

赤ちゃんは母親から完全に離れ、口から栄養を摂取します。しかし自然は女性にも子どもにも有益な方法で、母親が子どもに栄養を与え続けられるようにデザインしました。

母乳

母乳は赤ちゃんのために作られます。それぞれの動物種が、自分の子どもに最も適した母乳を産生します。

母乳には脂肪、糖分、ビタミンおよびミネラルが正しい割合および状態で含まれているのみならず、効率的な消化のための酵素や、特に呼吸器系と消化器系の疾患を予防するための抗体が含まれています。また、アレルギーの原因となり、後に喘息やじんま疹を引き起こす有害な蛋白は母乳に含まれていません。

初乳は完全な母乳になる前に分泌される水のような液体で、必要不可欠な養分を豊富に含み、赤ちゃんの消化器官がその後摂取する母乳を消化できるようにします。

母乳には汚染物質が含まれていません。例えば、人工乳は容器中で、あるいは手や汚染された水といった他の物との接触で汚染される可能性があります。ビタミンは母乳中では保存されていますが、人工乳の場合は加熱中に破壊されてしまうため、母乳保育の赤ちゃん以外はすべて、ビタミンを補給しなければなりません。

母乳保育は適切な温度で赤ちゃんの栄養要求量に見合った量の液体を供給できる、非常に便利な送達システムです。

母乳保育の生理

赤ちゃんの身体には非常に大きな知性が宿っているので、温かく柔らかい、栄養豊かな自然の贈り物である乳房をすぐに覚えます。赤ちゃんは子宮の中で早くから親指を吸う練習をしていたため、乳首を吸う方法も知っています。赤ちゃんの顔面の筋肉は生まれてすぐに乳房を吸い、母乳を吸い込むことができるように発達しています。

赤ちゃんは母親のだす音、話し声、笑い声、歌声を聞いて喜び、母親の香りを覚え、母親の腕の中では安全であることを覚えます。赤ちゃんはここで保護されながら愛情を受け入れることを学び、肉体的、精神的に成長します。赤ちゃんのすべてを見ながら、母親も成長します。

母親の必要性

時として、何らかの理由でうまく母乳保育をできない女性がいます。愛情という栄養素が最も大切ですが、それは母乳保育をしなくとも組み合わせ、子どもに与えることができます。母乳保育が困難であること、あるいは不可能であることに罪の意識を感じたり、恥ずかしいと思ったりしてはいけません。哺乳はできるだけ静かな環境で行います。時には、母親は不安から赤ちゃんへの哺乳を拒んだり、「授乳戦争」を起こしたりします。こうなった場合には、経験豊かで賢明な、辛抱強い女性から専門的な援助を受けるべきです。普通は女性の家族のだれかが、上手に育児を手助けしてくれます。組織や国によっては、育児や母乳保育を専門にアドバイスしてくれる人々のグループがあります。

父親の役割

自然は赤ちゃんに母親のみでなく、父親も与えました。父親が赤ちゃんを守り、幸せにするという役割は母親に十分な食事、水分、休息を提供し、夜間に赤ちゃんの要求の一部に応えるなど、母親のケアという形で表現されます。

母乳保育の確立

特に母乳保育の初期には、恥じらい、不安、いらだちなどの精神の乱れ、また慢性的な疲労によって母乳が出なくならないよう、注意することが大切です。

赤ちゃんには、空腹でお乳を欲しがっている時に授乳するのがベストです。生後数週間は夜間も授乳するのが普通であり、母乳の十分な分泌量を確保するためにも不妊を維持するためにも有効です。

服薬および喫煙

母親が処方薬を使用する際には、医師のアドバイスを受けなければなりません。それは、母乳が汚染物質を体外へ排泄するための効率の良い経路であり、赤ちゃんに害を及ぼすことがあるからです。同じ理由から喫煙は避けるべきです。

吸引

吸引が乳房に対して及ぼす局所的な効果は、プロラクチンの作用を介した母乳産生の刺激です。これは赤ちゃんの要求に対する反応です。吸引がなければ、母乳は干上がってしまいます。このような現象は、例えば陥没乳頭などでその乳房から母乳を吸うのが難しいなど、赤ちゃんが片方の乳房ばかりを吸引した場合に起こることがあります。赤ちゃんがその乳房の吸引を止めてしまうとその乳房の母乳は干上がりますが、赤ちゃんが吸っているもう片方の乳房では普通通りに母乳が産生されます。

脳下垂体は神経系を介して、オキシトシンと呼ばれるホルモンを産生します。オキシトシンは子宮収縮ホルモンです。赤ちゃんが乳房を吸うと母乳が流れます。この反射はおなかがすいた赤ちゃんを見たり、その声を聞いたり、匂いをかいだり、あるいは他の赤ちゃんが近くにいるだけでも起こり得ます。したがって、養子の乳児も母乳保育することが可能です。

母親への有益作用

オキシトシンには赤ちゃんが乳房を吸った時に子宮筋を収縮させる作用があります。この作用によって、出産後の子宮は通常のサイズと形に戻ります。子宮が吸引に反応して収縮すると、血塊と悪露が子宮の外に排出されます。

母乳保育が女性を加齢後の乳癌および骨粗鬆症から守ることが、十分な証拠とともに主張されています。

妊娠中は胎盤ホルモンのエストロゲン、プロゲステロンおよびプロラクチンが乳腺の構造を発達させて、母乳産生に備えます。出産後、プロラクチンのレベルが高いため卵巣の機能は抑制されます。その結果、授乳中の母親はさまざまな期間にわたって不妊となり、赤ちゃんが固形食を十分食べられるようになるまで授乳を続けることができます。

母乳保育および受胎調節

不妊期の長さは様々です。母乳保育の作用もその一因となっています。効果的な吸引が極めて重要です。赤ちゃんには誕生後すぐに乳房を吸わせなければなりません。できるだけ早く母乳保育を確立できるよう、十分な注意が必要です。

Lactational Amenorrhea Method(LAM)は女性が赤ちゃんに十分な母乳保育をしており、かつ出血がない場合には、出産後6ヶ月間の妊娠率は2%前後であろうという前提に基づいています。観察や規則は用いません。それは、女性が不妊期および受胎可能期の粘液のパターンを教えられておらず、受胎可能期に戻ったことを知るすべがないからです。したがって、説明のつかない妊娠が起こることがあります。

ビリングズ排卵法は粘液パターンの変化で再び受胎可能となったことを正確に知ることができる、すべての女性のための優れた教育法です。出産後3週間頃から粘液記録をつけ始めなければなりません。この自然な受胎調節法の有効率は99%を上回っています。

ビリングズ排卵法を利用している女性は不妊期および再び受胎可能となった徴候を認識する方法を学びます。

母乳保育中のビリングズ排卵法を用いた不妊期の徴候の認識

女性が日常生活中に簡単かつ自然に行った観察が、ビリングズ排卵法の基本となります。

排卵が抑制されている間は膣口に粘液はみられず、膣口は乾いた感触がします。この乾いた感触は卵巣が活動していず、不妊であることを示しています。

時には完全に乾いた感触ではなく常に同じ状態のおりものが連続で、あるいは乾いた日によって中断されて、認められることがあります。この状態も卵巣の活動が弱く、不妊であることを示しています。

それとは異なるおりものはすべて、女性が再び受胎可能となったことを示しています。おりものは卵巣が活動し、エストロゲンホルモンを介して子宮頸管を刺激し、粘液産生を促していることを示します。

性交を不妊徴候の見られる期間のみに制限し、ビリングズ排卵法の 規則を守れば、妊娠は起こりません。

母乳保育中のビリングズ排卵法を利用した受胎可能性回復の認識

ビリングズ排卵法では女性に受胎可能性が回復したことを示す徴候の認識法を教えます。排卵に備えて卵巣から分泌されるホルモンの影響で子宮の頸部(子宮頸管)が粘液を分泌し始めます。精子細胞は頸管粘液に依存して生存し、卵子に到達して受精するため、この粘液は受胎に不可欠な成分です( ビリングズ排卵法の教本を参照してください)。

頸管粘液は膣口の外側に出て、膣口で起こる感触として認識されます。粘液が肉眼で観察されることもあります。

正常な周期が戻っても、女性は母乳保育を継続することができます。母乳保育は母親が望む限り、あるいは赤ちゃんが求める限り、女性が望まない限りは妊娠することなく続けることが可能です。

母親が妊娠すると母乳は出なくなるかも知れません。しかし、可能であれば母乳保育を続けてください。妊娠のために離乳させる根拠はありません。

ビリングズ排卵法の利用法

ビリングズ排卵法を正確に教わるためには、Billings Ovulation Method Centreの公認教師に連絡してください。最寄りのセンターを知りたい場合には私たちに連絡してください。センターに連絡がとれない方については、私たちがオンラインでお手伝いいたします。

受胎可能性回復に影響しうる状況

女性は多くの理由で、出産後6ヶ月以内に再び受胎可能となります。

  • 赤ちゃんを完全に母乳で育てていても、早期に排卵が起こることがあります。

  • 女性は罹患しているか栄養失調に陥っている。

  • 母乳保育が不可能

  • 一部しか母乳で育てていない

  • 働いているため、一部しか母乳で育てていない

  • 赤ちゃんの吸引が不十分

  • 赤ちゃんが罹患している

このような様々な状況下では、ビリングズ排卵法を理解し、そのガイドラインと規則に従うことが極めて大切です。そうすることによって、女性は受胎可能期の開始を認識することができます。粘液徴候を観察し、記録することによって必要な情報が得られます。 出血の開始もエストロゲンが分泌され、受胎可能期が近いことに対して注意を促すものです。カップルはその後の妊娠について、十分な話し合いによって決めることができます。